第三回 「どうなるトランプ政権の知財政策?- その2」

■「どうなるトランプ政権の知財政策?」

前回、トランプ政権は「知財に関心がないのでは」と書いた。 その結論に変わりはないが、知財制度そのものがひっくり返るようなメッセージがその後につぶやかれているので、今回はそれを取り上げてみたい。

そのメッセージとは、メキシコで生産された自動車が米国に入る時に高い関税をかけるという趣旨のもので、例によって大統領のツィッターで発信された。関税をかけて自国の市場を守るという考えは、大統領選でも言われていたので今更の感もある。しかし、関税障壁を設けることは WTO(国際貿易機関)や NAFTA(北米自由協定)などの協定に違反する可能性がある。WTO は 1995 年に成立した貿易ルールで、その枠組みは米国主導で作られたものである。その対象は、モノの貿易だけではなく知的財産にも及ぶ。もしメキシコ産の車に高い関税をかければ、それは WTO 違反の問題が勃発することは必定となる。 NAFTA の改訂交渉も間もなく始まるというから、米国の保護主義化は現実味を帯びてきている。

それでは、保護主義化はなぜ批判されるのか。それは、世界のリーダーの米国が経済面で自国優先の政策をとると、対抗上、他国も同じ政策をとらざるを得なくなるからだ。つまり、各国が自国の利益を守るためには必然的に自国の市場を閉ざさざるを得なくなる。

このような動きは経済のブロック化といわれ、第二次世界大戦勃発の大きな理由であった。関税協定(ガット)はその反省から生まれたもので、関税障壁を低くすることでブロック経済の発生を防止しようとしてきた。1995 年にはガットよりも強制力のある WTO に改組され、その対象には知財のルールも含められることになった。

しかし、半世紀をかけて営々と築いてきた関税障壁撤廃への歩みを、トランプ大統領はいとも簡単に否定し葬り去るようなつぶやきを行っている。筆者にはその感覚がまったく理解できない。