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September 15, 2002
TOPICS-02022-2
室内のワイヤレス通信(その2)

早稲田大学
 国際情報通信研究科
教授    松本充司

3. 電波メディアによる室内通信

これまでIrDAはデスクエリアワイヤレス通信の市場に展開されてきたが、このIrDAと同一のユーザモデルで電波メディアを利用した標準化グループが登場した。 Bluetooth SIGおよびHomeRFである。Bluetoothは、携帯電話やノートPC 、周辺機器間等の近距離データ通信のワイヤレス化を目的として開発された方式であり、2000年から対応チップの出荷が開始され、現在のチップ価格は5 ドル程度とされている。 Bluetooth対応機器の相互接続性を確保するために、応用別に各種のプロファイルが規定されつつある。電波メディアを利用することから、ポイントマルチポイント通信に加えてポイントマルチポイントも可能である。 また、携帯電話を経由した基地局間との通信にも親和性がある。更には室内の全ての隠れデバイスはカバンの中でもポケットの中でも発見できる等の利点があるが、反面特定のデバイスへの通信の指定が困難であると共に、セキュリティの点で厳密な規格が必要であること、また、2.4GHz帯域を利用したもので721/56kbpsと通信速度に限界がある。更に、ISM帯を利用していることから他のシステムへの干渉問題等様々な問題が潜在化している。

現在,IrDAとBluetoothとはユーザも出るが同一における技術であるが、両者は物理メディアおよびそれに伴なうメディアアクセス制御が異なるものの、ミドルウエアプロトコルやアプリケーションプロトコル(ex. IrOBEX, etc.)は同一のものを使用しようとする動きである。両者は下位は独自の規格であるが、上位の物理レイヤに独立な規格については両者はできる限り共通化を図るように努力している。表2 に IrDAとBluetoothの仕様を示した。

表2  Bluetoothの仕様

標準化団体 IrDA Bluetooth SIG
カバー範囲 1- 3 メートル 10 メートル
デバイス数 - 8/ piconet
周波数/波長 850-900 nm 2.45 GHz(ISM band )
音声チャネル - 3 per piconet
データ速度 115.2kbps, 1,4,16 Mbps 721/56 or 432/432kbps
価格 $5 $20 (現在)$5(将来)

図3にIrDAとBluetoothの距離と速度の性能比較を示した。



図3 IrDAとBluetoothの距離と速度の性能比較

図6より、赤外線メディアはその高速化に特徴があり、電波メディアは通信範囲に特徴がある、すなわち、IrDAとBluetoothはビジネスモデルが類似しているが、Bluetoothは必ずしも全てを包含しているわけではない。IrDAが優位な部分もあり、その部分の進展を図ることが重要である。逆にBluetoothは速度面で他のシステムに劣る。特にIEEE802.11aと比べるとデータ速度面では非常に不利となる。今後この面の克服が技術課題である。 また、図4にIrDAとBluetoothの発展経緯を示した。


図4 IrDA と Bluetooth の発展経緯

大方、ハイテク技術のマーケット導入では、技術の本質がわからない時点では過度の期待がもたれるが、徐々にその本質がわかってくると、やはりその欠点も見えてくることから、市場での期待は急激に降下する。もしその技術が市場の読みどおりであると再び期待されないで、市場に復帰できないが、もしその技術が本物であれば、市場にも再度期待されてくる。現時点では、IrDAの真価が認められ再評価されつつある段階であるがBluetoothはまだ再浮上には時間がかかるであろう。

4.今後はどうなるか

ワイヤレス通信の主役は音声であったが、今後は映像やデータの非音声通信が主流となるであろう。とりわけワイヤレスデバイスがもつ位置情報を利用したサービスが増えるであろう。これにビデオを加えたモバイルマルチメディアが登場するであろう。更には単なる納得と感動を与える情報通信のツールのみならず教育、医療環境等、知の創造、人間の健康や安心を与えるツールとして、はたまた大規模災害時の緊急情報提供ネットワークの担い手としてワイヤレス環境は貢献するものと期待している。 IrDAでは従来の規格ではスループットが低いことが指摘されている。

今後マルチメディアコンテンツの転送が中心になってくると、より高速度の通信仕様が望まれる。現在IrBurstとしてギガビットネットワークで結ばれるキオスクやホットスポットで、自分のPDAや簡易携帯端末に大容量のコンテンツを一瞬にしてダウンロードする仕様を日本を中心に進めている。(Iradhoc Group:早大他) これによって次世代のマルチメディア情報は容易に入手できる。更にIrDAではIrFM(Infrared Financial Management)として携帯電話等から商取引を行なう規格を決め、韓国を中心に実験を進めている。

参考文献
  1. 松本:"携帯情報端末のネットワーキング", 電子情報通信学会, Vol.78, No.2, P161, 1995
  2. 日経エレクトロニクス:"携帯型情報通信機器の未来" No. 628,pp.101, Feb.13, 1995
  3. 日本IBM篇: "赤外線通信プログラミングガイド", ソフトバンク,1995.11
  4. 松本,近藤,斉藤他; "Serial and Parallel Port Emulation over IR (Wire Replacement)",IrDA Standards, 1996.10
  5. M.Matsumoto :"Infrared Media for Portable Devices", Telekom praxis,1996 Marz, Band 73, pp46-50
  6. 高川,下倉,今枝; "赤外線通信を利用した画像通信プロトコルIrTran-Pの開発とその応用", 画像電子学会論文誌, Vol.27, No.5, 1998.10
  7. 松本,若原他;" 赤外線静止画転送プロトコル(Ir Tran-P)の相互運用試験と評価", 画像電子学会論文誌, Vol.28, No.5, 1999.10
  8. I. Iwai; "Bluetooth overview", Proceedings of the International symposium on Mobile Networking, Waseda University (GITI), 1999.7
  9. IrDA公式サイト:http://www.irda.org
  10. Bluetooth 公式サイト:http://www.bluetooth.com
  11. 日経エレクトロニクス

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