<まえがき>
2002年10月21日〜25日にかけて、英国のオクスフォードの近く Didcot で開催されたIEC/TC76委員会へ参加しました。
DidcotはOxfordの南に位置する人口1万9千人の小さな町で、London PadingtonよりGreat Western の Intercity で Didcot Parkway で下車します。この近くには機関車トーマスが出てきそうな、鉄道博物館もあります。
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TC76委員会の会場は、英国放射線防護局(NRPB)内の広い敷地に囲まれたトレーニングセンターでした。
<参加の目的>
昨年、ICSAは同委員会でTC76/WG5のリエゾンとなりましたが、今回はその実質化を図る目的で参加しました。TC76のリエゾンになると、リエゾンレポートを提出することが可能となり、リエゾンレポートを基にワーキンググループ(WG)で議論することが出来るようになります。そこで、民間企業が集まっているICSAらしいコメントを出すことで、学術的な議論に走りがちなIECに対して異なる視点からの話題を提供することと、ICSAの代表として参加し、各国の専門家との意見交換や議論を行なうことにより、ICSAの存在価値を高めることを目標としました。
ICSAがリエゾンとなった経緯については、当ホームページにも掲載しております。昨年の出張報告
TOPICS-01013 をご参照下さい。
<リエゾンレポートの内容とWGにおける議論の模様>
ICSAからのリエゾンレポートとして、9月末に日本ビクターから発表されたHDTV信号伝送用の屋内光無線システムからヒントを得て、屋内赤外線システムの将来像として日本の技術が進んでいる白色LEDやレーザダイオードによる照明と信号伝送を兼ねたデバイスの検討を取り上げることといたしました。
24日のWG5の分科会で、ICSAからのリエゾンレポートを紹介しました。(レポート全文については会員限定ページに掲載いたします。)
先ず白色のLED、LDを用いた照明と光伝送を兼ね備えたデバイスは変調された光を扱うので光通信担当のWG5のスコープに入ることを確認しました。民生用に使われるのであれば、安全規則による規制を受けないレーザ安全のクラス1にする必要があることを主張したところ、そのためには今のIEC60825-1の安全規則に拠ればデバイスの大きさを充分な大きさにして、クラス分けの測定時にクラス1の制限を超えないようにすることが必要になるのではないかという議論になりました。
同時にこのデバイスは見た目はシェードを被った照明器具となるため、照明用のランプに関する安全規則からの規制も受けることになります。照明に関する安全規則については、丁度TC34のリエゾンレポートを提出していた別の標準化団体であるCIEから「安全規則をIEC/CIEの統合安全規則としてIECへ取り込む」というコメントが寄せられました。今回提案したデバイスは、この照明器具に関するIEC/CIEの統合安全規則が承認されれば、その適用も受けることになります。その際、レーザの安全規則と照明に関する安全規則による取り扱いが異なることは、ユーザにとって好ましい方向ではありません。
今回のICSAのコメントは、標準化問題の中でのハイパワーのLED、または拡散されたレーザダイオードの取り扱いについてのタイムリーなコメントになったのではないかと思われます。
ICSAのコメントを説明している時に、周囲から「面白いアイデアだ」と言う声が聞こえて来たと日本のTC76委員の一人が教えてくれましたので、今後、ユーザの安全を保障しながら光無線装置を使い易くするための安全規則の見直しの作業については、ユーザの声を代弁する形で、ICSAから積極的に働きかけることが必要であると再確認した次第です。
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