昨年実施した『「光無線通信」に関するアンケート調査』の結果を10月のホームページに掲載いたしましたが、当アンケート調査の際に通信事業関連各社の方々から多くの【コメント】が寄せられました。この度、これらのコメントに対するICSAとしての考え方を【回答】としてまとめましたので、第2回目の報告としてご報告いたします。
@ ラストワンマイル構成の1:nのアクセスの伝送パフォーマンス
- 1:nの分配ができることが望ましい。
- 1:nのアクセスが必要であり、その場合の伝送パフォーマンスはどうか。
- 埋め込み光ファイバの数を多くして、必要とされる場所全てに1本ずつ敷設すれば、無理して光無線は使わなくてよい。ワンマイルの距離で雨が降れば通信の中断は避けられないのではないか。
- ラスト100mの基地局について、設置と電源供給システムに課題と疑問がある。
- ラストワンマイルのアクセス手段には色々な方法があってよい。常設ではなく、イベント的な短期間回線が必要なケースに適用できればよいと思う。
資料−@ 「ラストワンマイル構成における 1:n アクセスの伝送パフォーマンス」をご覧下さい。
A 屋外設置の耐候性
- 屋外設置機器の耐候性とコストパフォーマンスはどうか。
光無線装置は屋外に設置される機会が多いため、屋外使用での雨水対策、熱対策、日射対策、塩害の腐食対策などは十分に行なわれており、実績も積み上げて来ています。また、このように耐候性のための設計は特別なものではありませんので、このためにコストに大きく影響することもありません。
B ビル建設の影響
- クリアランスがビルの新築などでとれなくなってしまうケースがあるが、無免許の光無線の場合、どのようにしてビルの建設などの情報をもらったり、権利を主張したりできるのか。
- 光無線は有効と思うが、遮蔽物がいつ何時、光を遮るかもしれない。その時、一度提供したサービスを停止するわけにはゆかない。このような場面が発生すると、補償問題に発展する可能性があり、必ずしも実現できるとは思えない。
- 遮蔽物があると途切れたりしないのか。
- 障害物の発生による回線断などで、システムを安定に維持できるかが問題と考える。
- 障害物の回避対策に疑問がある。
- 直進性の強い光無線で、図にあるようなシステム構成が可能なエリアがどの程度あるのか疑問である。
ビル間通信を行なう場合、光はマイクロ波の電波と同じように、送受信アンテナ間にある障害物の影響を受けます。そのため、送受信間で見通しを遮るようなビルが建つ場合は通信が出来なくなります。通常、ビル建設に先立ってその計画がわかりますので、あらかじめ迂回ルートを作るか、送受信の経路を変えることが必要になります。
なお、光は電波と同じ電磁波ですが、その周波数が非常に高いために電波法の規制を受けることがなく、目に対する安全基準を守れば自由に回線設定が可能です。反面、電波伝搬障害防止制度の恩恵も受けることが出来ません。従って、ビル建設に関しては建設計画の情報を入手して事前に対策を立てておくことが必要です。
C 安全性
- IEC60825の安全要求を考慮する必要性があるのではないか。
ICSAの光無線装置及びシステムに関するガイドラインではIEC60825-12を順守するように考えています。IEC規格の内容は、ICSAホームページの「屋外光無線通信システム導入ガイドライン 付録IEC60825 part 12」を参照して下さい。
D 気象条件の屋外光無線に対する影響
- 大雨の時の切断のバックアップをどうするかが課題である。
- 雨、雪などに対する信頼度が知りたい。
- 回線の安定性に疑問が残る。天候に左右されるようでは実用的でない。
資料−D 「気象条件の屋外光無線に対する影響」をご覧下さい。
E セキュリティ
- 無線LANや1:n部分で、盗聴に対する解決策に不安がある。
光無線で盗聴をするためには、物理的に光を受けなければなりません。そのために受光部分を通信している1対の受光部、送光部の近くに設置する必要があります。しかし、電波無線に比べるとビームが絞られているため、受光部の近くに盗聴用の受光部を設置しなければなりません。これは盗聴という行為を行うのに、大胆に盗聴設備を設置することになり、物理的に難しいことを意味します。つまり、光無線システムを利用する場合には、無線電波に比べ盗聴されにくいというにとになります。
また、システム上の光無線システムが構築されていた場合で、物理的でなく、LAN上に接続された端末から盗聴を行うケースも考えられますが、このケースについては、通常のLAN上での考慮は必要です。
F 価格
- 2.4GHz帯無線機より低価格か。降雨などの影響が少ないことなど、総合的な短所などを知りたい。
- ダークファイバの開放等、無線LANの導入コストの関係で、今すぐ加速度的に増えるとは思えないが、今後、有線から無線へ変わってゆくのは必然と思う。コストパフォーマンスの向上が必須である。
- コストに関しては計算すればわかるが、光無線システムでのデメリットを検討する必要がある。
- 最大の関心事としては、回線品質とコストパフォーマンスと将来対応(増速等)である。特に、コストについては通信事業として可能なのか知りたいところである。
アクセス系として電波無線と比較をする際、光無線の場合、回線部分は確実に10Mbps〜100Mbpsを確保できること、データセキュリティーが原理的に高いことがあります。アクセス系への応用で、電波に比べ高い性能を期待できる光無線装置はいままで比較的高価なことが問題でした。
そこで、ICSAでは:
タイプ1: |
ビル間又は中継用に100Mbps〜1Gbps、
最大距離500mの光 無線装置 |
タイプ2: |
各ユーザへの引き込み回線に使われる10Mbps〜100Mbps、
最大距離100mの光無線装置 |
について共に従来に比べ大幅にコストパフォーマンスを向上させた装置を目指してい
ます。これらについては2001年度中に検討案の完成を目指しています。
G 設置
- ビルの振動によるfocusのズレに対する解決策はみつかっているか。
ビルの屋上に取り付けた場合、道路、鉄道からの振動、ポールに取り付けた時は風の影響による振動を考慮する必要があります。
これらの影響を避けるには、受信する光ビームを拡大することと、送信側で光の放射角度にサーボを掛けて安定化する方策が考えられます。ICSAでは価格性能比を最大限にするように技術検討を進めています。