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第二回「どうなるトランプ政権の知財政策?」
トランプ政権が世界を翻弄している。大統領はもとより、側近の振る舞いも公人としていかがなものか、良識が疑われる。このような陣容でトランプ政権は米国の知財政策をどこに引っ張っていくのであろうか。この疑問は、日本の知財関連のセミナーや講演会でも定番の質問となっている。私はこの質問には、トランプ政権は知財にあまり関心をもつことはないだろうと答えている。その理由はいくつかある。
まず、大統領自身が不動産で財をなした人であり、無体財産にはあまり興味がないのではないか。次に「アメリカ・ファースト」の優先項目は製造業を米国内に回帰させること。国内に製造業が戻り、モノづくりの基盤ができれば知的財産が生まれる。知財は当然のように権利化される。問題は、それを政権が外交政策の「てこ」として政治的に使うかどうか。おそらくそれはないであろう。
歴史的にみると、米国の民主党政権は強い国内知財を、弱い自国産業の利益と相殺させる形で貿易収支のバランスをとろうとしてきた。例えば、90年代の半導体や乗用車の対米輸出の自主規制を日本に求めたのがそれであり、TPPも根底には同じ思想があった。ところが、強みとしていたはずの知財はITを駆使したサービス関連にシフトしていて、肝心のモノ作りのための基盤技術が空洞化した。つまり、産業競争力には貢献しない知財だった。近年、米最高裁が特許を無効することが多いが、無効とされた特許はサービスやビジネスモデル、そして旧知工程の組み合わせ特許である。それらは長い間特許が認められなかったもの。
型破りな言動だけが報道されることが多いが、新政権は基本的に共和党政権である。共和党政権は伝統的に経済活動を企業の自主性に任せ、あまり制約しない。それは知財にもあてはまる。アメリカ・ファーストによって製造業が力を取り戻せば企業はモノ作りのための知財を蓄積しそれを行使することになろう。その時に米国の知財力が復活するかもしれない。それはトランプ大統領の意向とは無関係な結果である。